東京高等裁判所 昭和40年(う)719号・昭40年(う)720号 判決
被告人 金東鎮 外一名
〔抄 録〕
被告人金の弁護人牧野内武人外二名の控訴の趣意一について所論は被告人金が被告人南から借り受けた本件土地は、被告人南が同被告人のために自らの残土投棄行為により公有水面上に造成した土地であつて、土地となつた瞬間から被告人南の占有下におかれていたものであり、東京都が占有管理していたものではないと主張する。
よつて案ずるに、被告人金が被告人南から借り受けた国鉄越中島線南側中央部の土地約五六五坪七合五勺は、原審相被告人尹仁奎が被告人南から借り受けた右土地の西南部の約一、二四三坪七合七勺とともに、事実上は被告人南が残土を投棄し埋立てたものであるが、しかし、右各埋立(但し被告人金が借り受けた土地のうち後記被告人南が独自に埋立てた部分を除く)は、小島興業社の従業員たる被告人南が、東京都が株式会社平和島に対して有する二九、〇〇〇立方米のいわゆる土壤債権に基づき同会社をして残土投棄により埋立てさせることとした工事の下請として、これを施行したものであり、しかして右埋立の終了した昭和三七年五月初めころ株式会社平和島から東京都(同都港湾局埋立事業部)にその引渡がなされたのである(原審証人岩井克已、同内村三俊の各供述参照)。
もつとも被告人金が借り受けた土地には、株式会社平和島が東京都に埋立地を引渡した後に、被告人南が同会社の下請工事としてではなく独自に埋立をした部分も存するけれども、右部分及び被告人南が株式会社平和島の下請工事として埋立をした部分を含め、東京都が埋立の免許を受けた同所の公有水面約四七、四八三平方米については、すでに昭和一九年ころ東京都が一応埋立を完了したものであり、ただ戦時中等のためまだ竣工認可も受けず、その間土壤の一部が流出したため湿地帯化し、または満潮時に浸水する箇所も生じたけれども、全体として土地と認められる状態になつており、東京都がこれを占有管理してきたものであることが認められる(前掲各証言参照)。してみれば被告人南が被告人金に賃貸した土地のうち被告人南が独自に残土投棄をした部分についても被告人南が残土投棄により公有水面上に新に土地を造成しその占有を取得したものであるということはできない。
なお所論は東京都は本件土地につき標識その他第三者に東京都の管理下にあることを認めさせる方法を講じなかつたから、同都は侵奪さるべき占有を有していたとすることはできないというが、不動産侵奪罪における占有は事実上の支配であることをもつて足り、必ずしも標識等の明認方法を講ずることを要するものではない。
本件土地につき不動産侵奪罪を認めた原判決に事実誤認の違法は存しない。
(樋口 関 小川)